2021/04/28朱肉・インクについて①

「はんこ屋大将」にアクセスいただきありがとうございます。今回は、ハンコ・スタンプを捺す時に欠かせない朱肉やインクの内、朱肉についての話です。

　まず朱肉とは、「朱液」と呼ばれる油性顔料をモグサなどの植物繊維に混ぜたものやスポンジパッドに染み込ませた道具のことを指します。朱肉以外のスタンプ台やネーム印に使われるインクには水性や油性、染料系、顔料系など様々な性質のものがありますが、およそ2000年前に中国で誕生以降、朱肉に使われる液は基本的に「朱色の油性顔料」です。
　これは朱肉の特徴として最大のものであり、用途などを理解する上でとても大切です。朱肉に朱液が使われる理由には、主に朱色に高い耐光性（紫外線による変色への耐性）があることや油性顔料に耐水性などがあるからとされています。また、朱液はハンコに付けて押印した時、紙に染み込むのではなく（一般的なインクは紙の分子に染み込みます）、紙の表面にのみ吸着します。そのため、一度押した後は紙の劣化や変色に影響されにくいため、非常に長い年月を経ても文字の状態を維持できるという利点がありました。そのため、現代にいたるまで契約や権利の保障には押印が求められてきました。
　利用上の注意としては、変化・変色に強い分、含まれる油分も強力なため、ゴム印（赤ゴム）や樹脂印のような印鑑以外の製品を溶かすことがあることです。この場合は、必ずそれぞれに適したインクを使うこと、または黒ゴムのような耐油性のある製品を購入することで破損などを防げます。
　儀礼的な面では朱色は、その不変性から高貴な色とされた他、血の色に似ていることから契約時に互いの信頼を示す意味合いも含まれたとも言われています。

以下が朱肉の形態の一覧となります。購入時の参考にどうぞ。

練り朱肉…油と朱砂（硫化銀）を混ぜたものに植物繊維（モグサなど）を加えて練り上げたもの。中国製のものは「印泥」と呼ばれます。事務用品として売られる「スポンジ朱肉」と比べると色が濃く、より変化に強いという特徴を持ちます。また、書道や絵画などの美術品に捺す「落款印」などで好まれます。

スポンジ朱肉…事務用品として利用される朱肉です。ケース内に布枠やスポンジ、マットを収めることで、朱肉のノリと実用性を両立した製品です。各メーカーごとに性能に違いがあり、速乾性を重視したものや携帯性能を持たせたもの、耐水性・耐薬性などの耐久力を高めたものまで様々な製品があります。

　このように、朱肉や印鑑は儀礼的な意味だけでなく、実用的な利点があるため今日まで用いられて来ました。昨今デジタル化や省エネ化として電子文書を普及させて押印を削減する動きがありますが、権利や財産の保障は契約書の現本を実体として持っておくことが大切です。また、企業運営でも基本的にはデジタルデータで管理しても大切な権利や情報は実体化しておくときに印鑑などを使うことで保存性やセキュリティ性を高めることができます。これらの情報がお客様の権利を守ることに繋がれば幸いです。
　
　次回は、スタンプ製品に使うインクについての話となります。

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